「子供が生まれたから、足音を気にせず暮らせる戸建てに引っ越したい」「いつかは自分の家を持ちたいから、まずは賃貸で戸建て暮らしを体験してみたい」
そんな前向きな理由で戸建て賃貸を探し始める方は増えています。しかし、実際に物件を探し始めたり、周囲の友人に相談したりすると、「戸建ては寒いらしいよ」「アパートみたいに音がうるさいんじゃない?」といったネガティブな意見を耳にして、不安になることはないでしょうか。
特に、これまで頑丈なマンションに住んでいた方にとって、木造という構造への変化は未知の領域です。実際に住み始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、建物の仕組みと音の聞こえ方の違いを正しく理解しておくことが不可欠です。今回は木造戸建て特有の音事情と、快適に暮らすためのポイントを徹底解説します。

1. なぜ違う?RCマンションと木造戸建ての「遮音性」の仕組み
まず、根本的な建物の構造の違いについて理解を深めましょう。一般的に分譲マンションなどで採用されている鉄筋コンクリート造(RC造)と、多くの戸建て賃貸で採用されている木造とでは、音を遮る「遮音性」のメカニズムが大きく異なります。
「重さ」が音を跳ね返す
音というのは空気の振動です。この振動を壁でブロックして向こう側に伝えないようにするためには、壁自体に「重さ(質量)」があることが非常に重要になります。これを「質量則」と呼びます。RCマンションの壁はコンクリート、つまり「石の塊」のようなものです。非常に重く密度が高いため、音のエネルギーを跳ね返す力が強く、高い遮音性能を発揮します。
一方で、木造住宅の壁は、木材の柱と柱の間に断熱材を入れ、石膏ボードやサイディング(外壁材)でサンドイッチした構造になっています。コンクリートに比べると圧倒的に軽いため、物理的な法則として、どうしてもRCマンションほどの遮音性能を出すことは難しくなります。これが、「木造は音が響きやすい」と言われる最大の理由です。
「隙間」が音を通す
もう一つのポイントは気密性です。RCマンションは、コンクリートを流し込んで作るため、継ぎ目のない一体構造になりやすく、気密性が非常に高いのが特徴です。隙間がなければ、空気の振動である音も入ってきにくくなります。
対して木造住宅は、多くの部材を組み合わせて作るため、構造上、目に見えない微細な隙間ができやすい性質があります。最近の注文住宅などでは「高気密高断熱」を謳う住宅も増えていますが、一般的な賃貸用の戸建てにおいては、RCマンションほどの密閉性は期待できないことがほとんどです。この「軽さ」と「隙間」の違いが、生活実感としての音の違いに直結してきます。
ただし、一括りに木造住宅と言っても、使用する部材によって建物自体の遮音性や気密性能は大きく異なります。ウッドファイバーやセルロースファイバー等の質量が多い断熱材や、発泡ウレタンなどの気密性を担保しやすい断熱材を使い、FIX窓やトリプルサッシを多用して気密性を高める努力を徹底した住宅と、遮音性や気密性を考慮していない建物では、音漏れはもちろんのこと建物内の温熱環境にも大きな差が見られます。内見の際は、「この建物の気密性(C値)はどの位ですか?」「この建物はどんな断熱材を使用されていますか?」と聞いてみても、ほとんどの仲介会社さんは答えられないと思います。現状の賃貸住宅は、『遮音性』に気を配った建物は僅かながらに存在しますが、『気密性』に配慮した建物はほとんどお目にかかることは無いと思います。
2. 実はここが一番違う!「外からの音」の聞こえ方
マンションから木造戸建てに引っ越した方が最初に驚くのが、外の環境音の聞こえ方です。マンションの中層階や上層階に住んでいた場合は特に、そのギャップを強く感じることになります。
【気密性の低い木造住宅は、こんな音も聞こえます】
・雨や風の音
屋根や外壁に当たる雨音、風が建物を叩く音が、マンションよりもダイレクトに聞こえます。特に2階の寝室などは屋根との距離が近いため、激しい雨の日は音が気になることがあるかもしれませんが、高気密の建物内では、雨が降っている事すら室内ではわからないこともままあります。
・通行人の話し声や足音
道路との距離が近いため、家の前を歩く人の話し声や、自転車のブレーキ音などが室内に入ってきやすくなります。特にリビングが道路に面している場合は顕著です。
・車の走行音
トラックやバイクなどの重低音は、木造の壁を振動させて伝わりやすいため、幹線道路沿いの物件などは注意が必要です。
しかし、これは裏を返せば「外の様子が分かりやすい」ということでもあります。雨が降ってきたことにすぐ気づけたり、家族が帰ってきた気配を感じ取れたりと、戸建てならではの「地に足のついた生活感」としてポジティブに捉える方も多くいらっしゃいます。
3. 生活音は漏れる?「中からの音」とご近所への配慮
外からの音が聞こえやすいということは、逆もまた然りです。家の中で出している生活音が、外に漏れやすいという点にも注意が必要です。良好なご近所付き合いを続けるために、特に意識しておきたいポイントをご紹介します。
窓と換気口が音の出口
音は壁よりも、薄いガラス窓や、給気口・換気扇といった「開口部」から漏れ出ていきます。特に木造戸建ては、隣家との距離が1メートル程度しかないことも珍しくありません。そのため、窓を開けたままテレビを見ていたり、大きな声で電話をしていたりすると、お隣さんに丸聞こえになってしまうことになるわけです。
【トラブルになりやすい生活音】
意外と盲点なのが、夜間の生活音です。RCマンションでは気にならなかった「洗濯機の回転音」や「掃除機の音」、あるいは「階段を上り下りする足音」などが、静かな住宅街の木造戸建てでは隣家に響いてしまうことがあります。深夜や早朝は窓を閉め、音の出る家事は控えるといった、戸建てならではのマナーを意識することが大切です。
4. それでも戸建てを選ぶ最大のメリットは「縦の音」
ここまで遮音性の弱点について触れてきましたが、それでも多くのファミリー層が木造の戸建賃貸住宅を選び、満足されているのには大きな理由があります。それは、集合住宅最大の悩みである「上下階の騒音トラブル」から解放されるという圧倒的なメリットです。
子供がどれだけ走っても、下は「自宅」
マンション暮らしで最もストレスになるのが、上階からの足音や、逆に自分たちの子供が立てる足音で下階に迷惑をかけていないかという不安です。どんなに遮音性が高いRCマンションでも、重量衝撃音(子供がドスンと飛び跳ねるような音)を完全に消すことは困難です。
しかし戸建てであれば、2階で子供が走り回っても、その下にあるのは他人の家ではなく、自分たちのリビングやお風呂場です。「静かにしなさい!」と一日中怒り続けるストレスから解放されることは、子育て世帯にとって何物にも代えがたい価値があります。外からの音や多少の生活音漏れといったデメリットを補って余りあるメリットが、ここにあるのです。
5. 賃貸でもできる!快適に暮らすための音対策
構造を変えるリフォームができない賃貸物件でも、インテリアの工夫次第で遮音性を高め、音の響きを抑えることは可能です。「いつかは持家」と考えている方にとっては、将来の家づくりの参考にもなるテクニックです。
窓周りの対策を強化する
先ほどお伝えした通り、音の出入り口のメインは「窓」です。ここをガードするのが最も効果的です。薄いレースのカーテンではなく、「遮音カーテン」や「厚手のドレープカーテン」を選びましょう。また、カーテンの丈を床までしっかりと長めにとり、隙間をなくすことで、防音効果だけでなく断熱効果もアップし一石二鳥です。
家具の配置で壁を作る
隣家と接している側の壁に、背の高い本棚やタンスなどの家具を配置するのも有効な手段です。本や衣類が詰まった家具は、それ自体が音を吸収・遮断する壁の役割を果たしてくれます。テレビやスピーカーなど音の出る家電は、隣家に面していない壁側に設置するか、壁から少し離して置くことで、振動が伝わるのを防ぐことができます。
床に吸音材を敷く
室内での反響音を抑えるために、ラグやカーペットを敷くこともおすすめです。特に2階の子供部屋や廊下に厚手のマットを敷くことで、1階への足音の響きを軽減し、家族間での「うるさい!」というストレスを減らすことができます。
6. まとめ:音の違いを理解して、賢いお試し居住を
木造戸建てとRCマンションでは、音の聞こえ方や響き方が全く異なります。しかし、それは決して「木造が劣っている」ということだけではありません。気密性の低い木造住宅は、「外の気配を感じられる開放感」もありますし、「上下階を気にせずのびのび暮らせる自由」は、戸建てでしか味わえない魅力です。
また、気密性の高い木造住宅(C値:0.5以下)であれば、外で雨が降っていることも建物内では気づけないくらい、遮音性の高い建物もあり、入居する建物の気密性能や使用している断熱材の厚みや種類を理解した上で入居することが、大事な経験値となります。
「気密性の低い(高い)建物は、このくらいの雨音はこんな風に聞こえる(聞こえない)んだな」という気づきは、将来マイホームを購入(建築)する際に、どんな断熱材をどの程度使うのが良いか?気密性はどの程度確保すれば良いか?といった、建築の専門家でも体感データの蓄積がない方もいらっしゃるので、大変貴重な経験になります。
まずは賃貸という身軽なスタイルで、木造戸建てのリアルな暮らし心地を体験してみてはいかがでしょうか。その経験は、きっとあなたの理想の住まいづくりにつながるはずです。
あなたにぴったりの「音」環境、プロと一緒に探しませんか?
私たち「株式会社イデアルコンサルティング」は、首都圏の1300以上の税理士・公認会計士事務所、750社以上の他士業・一般企業と提携する不動産コンサルティング会社です。運営サイト「カリコダテ」では、音の問題も含めたメリット・デメリットを正直にお伝えし、お客様のライフスタイルに最適な戸建て賃貸をご提案しています。入居後の管理やトラブル対応も万全の体制でサポートいたしますので、初めての戸建て暮らしも安心してお任せください。まずはお気軽にご相談を。